千社札は、手漉きの柾版大奉書を短冊形に切った紙片に、題名(住まい、氏名、雅号など)を、江戸文字で記し、また太い線と細い線の2本の子持ち枠で囲んだものをいいます。用途によって2種類に分けられ、一つは、神社仏閣に詣でた際、山門やお堂に貼りつけてくる、木版墨1色摺りの「題名納札」、信仰のための「貼り札」です。
そして、もう一つは多色摺りの色札「交換札」です。古くは霊場巡拝の際に、参詣者が木札に住まいと名を書いて、山門やお堂に打ちつけて、「当人に代わって札に代参してもらう」「当人に代わって札にその社寺にお籠りしてもらう」という願いを込めた意味の、民間信仰「題名納札」に始まるといいます。
初期は手書きの札でしたが、木版摺りとなり量産が可能となって、江戸後期に大いに流行しました。大きさは、手漉きの柾版大奉書和紙を短冊形に十六分割した「一丁札」を基本に、さらに四半分にした「小札」、「大半間」(2寸8分×8寸4分)、「小半間」(2寸5分×7寸5分)などがあります。
貼り札を墨1色摺りにするのは、墨の防腐効果による文字の「抜け」が期待出来るからです。永い間風雨に晒された千社札は、紙の部分が風化して抜け落ち、墨の文字が残ります。これが「抜け」で、その堂宇がある限り、自分がそこに参拝したという証が残る訳です。
江戸の通人や職人衆、芸者衆など粋筋が、それぞれ意匠を凝らして多色摺りに誂え、贔屓筋に渡したり、同じ趣味人同士が交換したりした、現代の名刺のようなものです。
納札交換会は、寛政年間(1800年頃)に始まり、以降、通人たちの間で盛んに行われました。各個人がそれぞれ工夫した千社札を持ち寄り、交換し合う集まりです。
現在も納札会は「東都納札睦」や「納札壱丁會」、「千社睦」などの会が、それぞれ年に数度交換会を開催し、好事家を集めています。千社札を貼るにもマナーがあります。あくまでも信心第一です。お参りを済ませ、納経、集印などをお願いすると同時に、貼る場所を社寺の許可を必ず受けて、墨一色の木版摺り貼り札を、ヤマト糊を使い、心を込めて貼ってください。許可が得られなければ潔く諦めることです。
千社札は「貼らせていただくもの」です。社寺の意向で剥がされ、洗われることもあります。その際に堂宇を傷めないための心配りも肝腎です。化学糊を使ったり、粘着紙のシールを貼ると、水洗いだけでは落ちないので絶対に慎むべきです。堂宇を傷つける行為はもっての他です。
サイズ
約58×168mm(100枚)
価格(税込・送料別)
¥55,000〜
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